平成十五年夏休み号「親子でやってみませんか!」
「牛乳を飲む人より、配達する人のほうが元気!」
一学期も終わり、夏休みが始まりました。小学校、中学校、高校、大学と何度となく経験した夏休みは、期待に胸躍らせながら待ちわびていたものですが、今年の夏休みももう半分が過ぎようとしています。何と無く寂しさを感じ始めているのは私だけでしょうか。
さて、英語のほうも空手の方も月に何人か問い合わせや見学に見える方が居られます。
お話をお聞きしますと、親御さんの子供に対する愛情、期待、心配、思いやりがよくわかります。一人っ子であったり、両親のどちらかが居られない家庭、学校でのいじめ、無気力、不登校、非行、家庭内暴力ほかいろいろな事情があり、子供だけはしっかり育てたいという方も少なくありません。また、なんら問題がないと見受けられる家庭でも、親の教育方針で少なくとも二十歳までの子供の設計図がほぼ完璧に出来上がり子供の発言する余地が皆無に等しいご家庭もあるようです。本当に世の中いろいろだなあと思います。
しかし、子供に過度の期待や、昔から言う溺愛、愛情の注ぎ過ぎは、かえって子供に負担をかけすぎ、子供をだめにしてしまうのではないでしょうか。親行はまことに難しいものですね。手綱を引きすぎても、緩めすぎてもいけないのですから、子供が生まれて初めて親になって右も左もわからない状態で、我が子と同い年の親にちゃんと育てろと言われても簡単ではないですよね。この意味では、子供が生まれてくるのは、親のため、親をしっかり育てるという意思が働いているようにも感じるのです。
ところで、私は、基本的に、親ができないこと、やらないことは子供に期待しないという考え方をしています。もちろん、子供は、天からの授かりもの、子供も親も最高の組み合わせとして選ばれてこの世に生を受け、親子の関係をいただいているものです。立派に育て上げ、社会のためにお返しする責任があります。子供に機会を与え、才能を見極め、開花させ、幸福にするのは親の、そして、教師の努めであることは明らかです。
また、親と子は別人格であるとも言えます。であれば、親の所有物でもロボットでもなく、一人の立派な人格として(または、そうなるべき子供として)扱うべきです。いつかは子離れ、親離れの必要な所以であります。天から選ばれて福田を持ち自己の人生の航路表を託されて生まれてきた子供です。ちゃんと育たないはずがありません。こう考えると親は、子供の生長を阻まないよう自己抑制しなければならないのかもしれません。
同時に、子供は、別人格でありながら、有り難い因と縁で結ばれた同じ人格でもあります。人と人との関係、結びつきはすべて因と縁に拠るものです。いま、NHKで「大地の子」の再放送が始まっていますが、血を分けたわけでもない養父と養子の親子の情には、目頭に熱いものを禁じ得ません。
話は変わりますが、現在空手道場の一般部(大人)の生徒さんは約五十名、うち男性三十名、女性二十名です。最高齢は男性六十五歳、女性六十六歳、三十代四十代五十代のお父さん、お母さんが増えてきています。お孫さんと一緒に稽古されている方が二名、お子さんも習っている方が五六名おられるようです。
きっかけは、やはりご自身の体力づくりです。体を動かすことは、自然の理にかない楽しいものです。また、この年になると、十代や二十代の時のような体の柔軟性、筋力、瞬発力は期待できなくなります。ほうっておけば、体は緩みっぱなし、筋肉は落ち、脂肪はつき放題、関節は錆び放題になってきます。体力が落ちれば気力も落ち気合が抜け自信も元気もなくなります。元気と体力が一番、ということに気がついた方々で「人生、やり直すぞ!」という思いで子供まで連れて来られる方も居られるようです。
また、ミュージカル(今年は「オズの魔法使い」に決定)でも、三十代四十代のお父さん母さん方が、中高生と混じって、基礎の発声練習から一所懸命稽古されています。
ところで、「牛乳を飲む人より、配達する人のほうが元気!」ということをお聞きになったことがおありかと存じます。せっかく子供に期待をかけているのであれば、そして、子供は親の背中を見て育つのであれば、試しに子供と一緒に英語なり空手なりやってみられてはいかがでしょうか。無理はいけませんが、特に空手の稽古の間同じ一時間待っておられるのであれば、一緒にやられるほうが、親子のコミュニケーション、スキンシップ、ご自身の気分転換、健康と美容、シェイプアップ、そしてもちろん、立派な子育てにも十分役立つものと信じるのですが。
(平成15年8月6日 古賀武夫)