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高歌哄笑-古賀武夫エッセー-


平成十四年7月号「ヤミツキになる楽しさ くさからて宣言」

ヤミツキになる楽しさ くさからて宣言

【久富良治さん(六十四才)全日本スポーツマスターズ出場】
まずはトップニュース!当空手道場男性最高齢の久富良治さんが、去る七月二十一日に行われた、全日本スポーツマスターズ佐賀県予選で、見事、六十一才~六十四才の組手の部で佐賀県代表に選ばれ、11月に神奈川で行われる全日本大会への出場が決定しました。まさに、快挙であります。
全日本スポーツマスターズというのは、昨年から始まった年齢別の国体のようなもので、出場者は、ほとんどが何十年の経験がある指導者です。武道の種目では、空手だけが入っています。
久富良治さんは、退職後六十一才から空手を始められ、週に二回、鹿島から通ってこられるという熱心さと、人並みはずれた気合で、実質二年で黒帯を取得、去年に引き続き二回目のマスターズ佐賀県予選への出場で、ものの見事に全国大会への出場権を獲得されました。久富良治さんは、笑顔、豪快な笑いが特徴です。
また、笑ってばかりの森永勝馬さん(五十二才)も、形の部に二年連続で出場、他の先生方に遜色のない立派な形を披露されました。

【和道流は、「肉体智」!】
ところで、この予選会を見た私の感想ですが、うちの空手、うちの連中、特に一般の男女は、すごい!ということです。うちの空手は、やればやるほど上手く、強くなります。
それは、日本古来の柔術がベースになったわが和道流は、いわば「肉体智」、脱力を心がけ、筋肉や力に頼らず天地人の理道にかなった年相応の自然ないい動き、技ができるからです。
ですから、今から始められた方も、三年以内には、黒帯が取れ、男性は四十才、女性は三十五才からマスターズへの出場権ができますから、このまま続けて頂ければ、二〇〇五年には、全日本マスターズ佐賀県代表選手は、うちのみんなで占められるのではないかと思います。

【くさからてとは?】
さて、「草空手」なんて言葉は初めて聞かれたことと思います。草野球という言葉があるのですから、草空手があっても何の不思議もないと思います。
草野球の反対は、プロ野球、そして、高校野球や大学野球など、日夜奮闘努力し、試合での勝利の栄光を目指して行う野球のことでしょう。
逆に草野球は、野球そのものを楽しむものだと思います。プロになる思いがある人も中にはおられるかも知れませんが、ほとんどの人がろくに練習する暇もない人たちで、勢い、試合そのものが練習、という場合も多々あるようです。草野球の試合も数多くあり、勝てば勝ったでそりゃ嬉しいものですが、負けて悔しくても楽しくやれたことを喜ぶ、そんな人たちが多いようです。力の抜けた、笑いの多い野球ではないでしょうか

【空手の悪いイメージを一掃!】
一方、「空手」といえば、ギクッと身構える方が多いのではないかと思います。空手は喧嘩の道具といった、何か殺伐としたイメージがあることも否定できません。
相手を叩き伸ばし、蹴り倒し、息の根を止める、姿三四郎など、一昔前の柔道映画では、柔道は人を助ける正義の味方、殺し屋の悪者は空手家、と相場が決まっていました。
私が空手を始めたのは、今から三十四年半前の昭和四十三年四月、東京外国語大学に入学してからのことです。基本的に、国立大学は、私立と比べるとずっと雰囲気がいい(悪く言うと軟弱)のですが、一年生の私から見ると、四年生、五年生の怖いこと、後輩の鼻血や、歯が飛ぶのを見たりすることが楽しみでやっているのではないかと思うような残酷な先輩もいました。
同じころ関西のある私立大学空手部に入部した私の従兄は、空手着を買うのにも法外な金額を請求され、稽古状態、人間関係のあまりのひどさに辞める事を決意し、先輩に話したところ、まず、特別稽古(ほとんど暴行)を受け、次に親を連れて来い、ということになり、退部金として相当額を払わされました。
また、別の某大学では、掃除の仕方が悪いと正座させられた一年生が、目をつぶらされていきなり腹部を蹴られ、死亡するという、あってはならない痛ましい事件も発生しました。
私の大学でも、私が一年生のときまでは、辞めたいというと、”退部試合”というのがあり、空手着が血で真っ赤になるようなことをやっていました。
入部のときから主将になると決めていた私は、それはおかしいと思いました。辞めたければ辞めさせてやればいい、「暴力は暴力しか生まない」と考え、主将になってから理屈の通らないことは一切廃止しました。

【たのしいからて! 一日来れば一日の得!】
その後、フランスで二年間空手を指導しましたが、フランス人も他の外国人も、みんな楽しんで、にこやかに話しながら、しかも厳しく熱心に空手をやっていました。そこには、日本で見るような、訳のわからない殺伐とした雰囲気はありませんでした。我慢してやるんじゃなく、楽しみながらやるから、うまくなるんだな、と実感しました。
これは、本当に新鮮な驚きでした。
さて、古賀道場のモットーは、「明るく、楽しく、元気よく!」です。
勝負は、人のやる気を引き出します。勝とうと思うこと、競争は、人の本能でもあり、大事なことです。試合に勝つことを目標とする人達には、その目標が達成できるようしっかりと指導します。(しかし、度の過ぎた競争は、かえって破滅の道です。本能は自然、欲望は不自然、ということを肝に銘じておきましょう。)
そこで、まず大事なことは、自然体で心身ともに力を抜き(リラックス)、楽しくやることだと思います。しかして、動くこと風の如く、一瞬に全力を集中します。
特に、大人の人達、中高年の男女、幼稚園、小学生の皆さんは、道場に来ること自体が楽しい、来てよかった、一日来れば一日の得、二日来れば二日の得、ということが実感でき、何十年でも長~く続けられる集い、学びの場にしたいと考えています。
みなさん、うちのからては、文武両道、全人的成長の方法です。お忙しいことと思いますが、忙しいからこそ、ぜひ、ぜひ、体と魂を大切に、健康と美容のため、すばらしい仲間たちと、一生ものの和道流、そして、くさからての楽しさ、醍醐味を味わってください!

(平成十四年十一月三十日 古賀武夫)